グローバル教育とは?文部科学省の定義・必要性・メリットをわかりやすく解説

グローバル教育とは?文部科学省の定義・必要性・メリットをわかりやすく解説
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「グローバル教育」という言葉を見聞きする機会が増えています。英語教育への関心の高まりとともに、「インターナショナルスクールに通えばグローバル教育を受けられる」「英語が話せればグローバル人材になれる」と捉えられることもあります。しかし、グローバル教育(Global Education)の目的は、単なる英語習得にとどまりません。

本記事では、グローバル教育の定義と英語教育との違い、文部科学省が定めるグローバル人材の3要素、日本の教育が抱える課題、家庭でできること、そしてインターナショナルスクールでの実践まで、保護者の方が知りたい情報を体系的にお伝えします。

Table of Contents

グローバル教育とは何か

グローバル教育とは、単に英語を学ぶだけではなく、国や文化の違いを超えて他者と協働し、世界の課題に主体的に向き合う力を育む教育です。ここでは、グローバル教育の定義や英語教育との違い、なぜ現代社会で重要視されているのかについて解説します。

グローバル教育の定義:「国際対応力(グローバル・コンピテンシー)」を育む教育

グローバル教育とは、グローバル化が進む社会の中で、多様な文化や価値観を理解し、他者と協働しながら主体的に考え、行動する力を育む教育です。文部科学省「初等中等教育における国際教育推進検討会報告書」では、国際教育を「国際化した社会において、地球的視野に立って、主体的に行動するために必要と考えられる態度・能力の基礎を育成するための教育」と定義しており、「自己を確立し、他者を受容し共生しながら、発信し行動できる力」の育成を目指すものとされています。

英語教育が「英語という言語スキルを習得すること」を主な目的とするのに対し、グローバル教育は、異なる文化・価値観を受け入れる力、世界の課題に対して問題意識を持ち解決に向けて取り組む姿勢、そして国際対応力(グローバル・コンピテンシー)を育むことを中心に据えています。英語力はグローバル教育を支える重要な要素の一つですが、その目的は「英語ができること」にとどまりません。異なる文化や価値観を理解し、自らの立場を認識しながら、多様な人々と協働して社会に関わるための資質と視野を育てることにあります。

英語教育と異なる点:世界とつながり課題解決する能力を育む

英語教育は、英語という言語の「聞く・話す・読む・書く」といったスキルを身につけることを目的とした教育です。一方、グローバル教育は、英語をあくまでコミュニケーションの手段として活用し、多様な価値観を持つ人々と協働しながら、自分の考えを発信し、社会課題の解決に主体的に取り組む力を育むことを目的としています。

つまり、英語力そのものを最終的な目的とするのではなく、言語を用いて世界とつながり、異なる文化や価値観を理解しながら、他者と協働して課題に向き合う姿勢と実践力を育てることが、グローバル教育の大きな特徴です。

グローバル化が進む社会

グローバル化とは、人・モノ・情報・資本が国境を越えて活発に移動し、世界の相互依存関係が深まることを意味します。

日本国内においても、企業活動や研究、教育をはじめ、さまざまな領域で国境を越えた協働が広がっています。そのような環境では、英語などの言語能力に加えて、文化的背景や価値観の違いを理解し、相互に信頼関係を築きながら協働できる力が、これまで以上に重要になります。

こうした変化は今後さらに進むと考えられます。日本で育つ子どもたちにとっても、将来どこで生活し、どのような職業に就くかにかかわらず、多様な文化的背景を持つ人々と関わる機会はさらに増えていくと考えられます。

文部科学省が定義する「グローバル人材」の3要素

文部科学省が定義する「グローバル人材」の3要素

文部科学省は「グローバル人材育成推進会議」(平成24年6月)において、グローバル人材に求められる要素を以下の3つに整理しています。

  • 要素①:語学力・コミュニケーション能力
  • 要素②:主体性・積極性・チャレンジ精神・協調性・柔軟性・責任感・使命感
  • 要素③:異文化理解と日本人としてのアイデンティティー

この3要素は、子どもたちにどのような資質や能力を育てていくかを考えるうえで、一つの有用な指針となります。

要素①:語学力・コミュニケーション能力

文部科学省が定義するグローバル人材の第1の要素は「語学力・コミュニケーション能力」です。ここでいう語学力は、試験で高得点を取るための知識だけではなく、外国語を用いて自分の考えを相手に伝え、相手の意図を理解し、相互に意思疎通を図るための実践的な能力を含みます。

英語に限らず多言語への対応力、そして言語を超えた非言語コミュニケーション(表情・ジェスチャー・文脈の読み取りなど)まで含めた広義のコミュニケーション能力が求められています。文法的な正確さはもちろん重要ですが、それだけでは十分ではありません。自分の考えを明確に表現し、相手の意見に耳を傾け、そのやり取りを通して理解や議論を深めていく力も重要です。

要素②:主体性・積極性・チャレンジ精神・協調性・柔軟性・責任感・使命感

第2の要素は、主体性・積極性・チャレンジ精神・協調性・柔軟性・責任感・使命感という内面的な姿勢や資質の総体です。これらは、知識を学ぶだけで十分に身につくものではなく、実際の経験や他者との関わりを通して徐々に形成されていく資質です。

こうした資質は、正解が一つに定まらない問いに粘り強く向き合う経験や、多様な価値観を持つ人々と協力して課題を解決する経験を積み重ねることで育まれていきます。

また、外から与えられた課題をこなすだけではなく、「なぜこの問題が重要なのか」「自分には何ができるのか」と考え、自らの関心や問題意識を行動につなげる経験も重要です。こうした主体的な学びを日常的に経験できる環境が、グローバル教育の質を支えます。

要素③:異文化理解と日本人としてのアイデンティティー

第3の要素は「異文化に対する理解と日本人としてのアイデンティティー」です。これはグローバル人材育成の文脈で見落とされがちですが、非常に重要な要素といえます。

グローバルに活躍するためには、相手国の文化・歴史・価値観への深い理解が必要です。同時に、自分自身の文化的背景や価値観を理解し、それを自分の言葉で他者に説明できることも重要です。文部科学省の枠組みでは、これが「日本人としてのアイデンティティー」として示されています。

国際的な環境で学び、行動することと、自らの言語や文化的背景について理解を深めることは、相反するものではありません。むしろ、自分自身の背景を理解しているからこそ、他者の文化や価値観についても、より深く理解しようとする視点が生まれます。インターナショナルスクールにおいて、日本語や日本文化に触れる学びが重要である理由の一つも、ここにあります。

なぜ今グローバル教育が必要なのか

なぜ今グローバル教育が必要なのか

AIの発展やグローバル化の進展により、子どもたちが将来活躍するために求められる力は大きく変化しています。ここでは、日本でグローバル教育の重要性が高まっている背景と、国が進める教育政策について解説します。

日本の「主体性不足」:アジア諸国との英語力格差を生む構造的課題

日本の英語力は、TOEFLの結果を一つの指標として見ると、アジア諸国との比較において低い水準にあることが指摘されてきました。「グローバル人材育成推進会議」(平成24年6月)の資料では、日本は163か国中135位とされています。こうした結果を、日本人の能力そのものに起因するものと捉えるのではなく、英語を学び、実際に使用する環境や、教育的・心理的な要因を含めた構造的な課題として考える必要があります。

日本では、日常生活の中で英語を使用する必要性が比較的少ないことに加え、間違えることへの不安や、人前で自分の意見を述べることへのためらいが、英語を実際に使う機会を限定する一因となる場合があります。その結果、知識として英語を学ぶ機会はあっても、自分の考えを英語で表現し、他者との対話を通して理解を深める経験が十分に蓄積されにくいという課題があります。

グローバル教育が目指すものは、語学力の向上だけではありません。異なる背景を持つ他者と積極的に関わり、自ら考え、自分の意見を表現し、対話を通して課題に向き合う主体性を育てることも、その重要な目的です。英語を「知っている」ことから、英語を用いて「考え、伝え、他者と関わる」ことへと学びを広げていくことは、日本の英語教育とグローバル教育を考えるうえで重要な課題の一つです。

文部科学省「せかい×まなびのプラン」が示す方向性

文部科学省は令和5年(2023年)8月29日、「せかい×まなびのプラン」を策定・公表し、グローバル人材育成を国家的な優先課題として位置づけました。

本プランでは「日本からの留学・人材の交流」「優秀な留学生や人材の受入れ・定着」「教育の国際化」という3つの観点から、学校段階に応じた施策が示されています。大学・高校段階での留学支援強化に加え、初等中等教育段階の施策としてもAI・オンラインを活用した国際交流や英語教育の強化が含まれており、グローバル人材育成を小学校段階から一貫して進める方針が打ち出されています。

グローバル教育を受けるメリット

グローバル教育を受けるメリット

グローバル教育では、英語力だけでなく、多様な価値観を受け入れ、自ら考え、行動する力を育めます。こうした経験は、将来の進学や就職だけでなく、変化の激しい社会を生きるための土台にもなるでしょう。

多様な文化や価値観に継続的に触れることは、自分とは異なる視点が存在することを理解し、一つの事象を複数の角度から捉える力を育てることにつながります。自分の意見を相手に伝え、異なる背景を持つ人と協力して課題に取り組む中で、コミュニケーション能力や協働する力も養われます。

さらに、正解のない課題に向き合う経験を重ねることで、問題解決力や柔軟な思考力が身につき、変化する環境にも適応しやすくなります。こうした力は国内外を問わずさまざまな場面で重視されるため、将来の進学や就職など、子どもの選択肢を広げることにもつながるでしょう。

グローバル教育の具体的な内容

グローバル教育の具体的な内容

グローバル教育では、世界とのつながりを意識しながら、自ら考え、対話し、行動する力を育むことが重視されています。ここでは、学校での実践例と家庭で取り組める方法をご紹介します。

探究学習×グローバルテーマ:主体性を育む授業実践

グローバル教育では、英語の授業だけに限定せず、複数の教科や領域を横断して社会的・国際的なテーマを探究する学習が重要なアプローチの一つとなっています。

国内の実践事例として、ある中学校では生徒がフィリピンのゴミ山問題を自ら調査して英語でインタビューし、その内容を発信するプロジェクトに取り組んでいます。また、別の高校では、東日本大震災の経験について英語で海外に発信し、海外の同年代の生徒と議論する学習が行われています。

こうした取り組みは、単に「グローバルな情報を教える」のではなく、生徒が自ら問いを立て、調べ、発信するプロセスを通じて主体性と多様性への理解を育む体験型の学びです。こうした学びは、知識の習得にとどまらず、自ら問いを立て、情報を検討し、他者と対話しながら考えを深めていく力の育成につながります。

家庭でできるグローバル教育:今日から始められる5つのアプローチ

グローバル教育は、学校や専門機関だけで行われるものではありません。家庭の日常にも取り入れられます。

  • ① 世界のニュースを話題にする
  • ② 多様な文化に親しむ
  • ③ 絵本や映画を通じて異文化の価値観に触れる
  • ④ 海外の同年代とオンラインで交流する機会を持つ
  • ⑤ 異なる文化的背景を持つ人々と自然に交流する機会を大切にする

大切なのは、すぐに「正解」を教えることではなく、子どもと一緒に驚き、疑問を持ち、考える過程を共有することです。保護者自身が世界の出来事や異なる文化に関心を持ち、対話を続ける姿勢は、子どもが世界への関心を広げるうえで大きな意味を持ちます。

インターナショナルスクールとグローバル教育

インターナショナルスクールとグローバル教育

グローバル教育を実践する環境として、インターナショナルスクールが注目されています。ここでは、インターナショナルスクールならではの学びの特徴と、代々木インターナショナルスクールでの取り組みについて解説します。

インターナショナルスクールがグローバル教育の場として選ばれる理由

インターナショナルスクールの特徴の一つは、異なる国籍、言語、文化的背景を持つ子どもたちが、日常的に同じ環境で学んでいることです。グローバル教育を特別な活動としてではなく、日々の学校生活の中で経験できる点に大きな特徴があります。

英語を「習う科目」としてではなく、学びやコミュニケーションのための言語として日常的に使用すること、異なる価値観を持つ友人と対話しながら学ぶこと、IB(国際バカロレア)などの国際的なカリキュラムを通じて探究型学習に取り組むこと。こうした学習環境は、文部科学省が示すグローバル人材の要素である語学力・コミュニケーション能力、主体性、異文化理解などを、日常的な学習や人間関係の中で育てる機会につながります。

英語を限られた時間だけ学習するのではなく、日々の学習や対話の中で実際に使用することで、言語は単なる教科ではなく、考え、学び、他者と関わるための手段となります。こうした継続的な経験は、インターナショナルスクールにおけるグローバル教育の重要な特徴の一つです。

代々木インターナショナルスクールのグローバル教育

代々木インターナショナルスクールは、国際バカロレアPrimary Years Programme(PYP)の認定校として、多様な国籍や文化的背景を持つ子どもたちが、英語を共通言語として学ぶ教育環境を提供しています。

探究型学習を通して、生徒は自ら問いを立て、考え、他者と対話しながら理解を深めていきます。こうした学習経験は、異文化理解、コミュニケーション能力、主体性、そして課題に向き合う力を育てる土台となります。

また、代々木インターナショナルスクールでは、日本語教育もカリキュラムの重要な一部として位置づけています。英語を主要な学習言語とする環境においても、日本語を学び、自らの文化的背景への理解を深める機会を持つことは重要です。国際的な視野を育てることと、自らの言語や文化について理解を深めることの双方を大切にすることが、学校の教育環境を考えるうえで重要だと考えています。

まとめ

グローバル教育とは「英語を学ぶこと」ではなく、語学力・主体性・異文化理解という3つの要素を兼ね備えたグローバル人材を育てる教育です。文部科学省は「せかい×まなびのプラン」を通じて国家的な優先課題として位置づけており、その重要性はますます高まっています。 グローバル教育は、家庭での小さな対話や経験から始めることができます。そのうえで、多文化的な環境の中で、言語を実際に使いながら探究し、異なる背景を持つ人々と日常的に学ぶ経験を重視する家庭にとって、インターナショナルスクールは有力な選択肢の一つとなります。重要なのは、学校の名称や使用言語だけで判断するのではなく、子どもがどのような環境で、何を学び、どのような人々と関わりながら成長していくのかを丁寧に見極めることです

カリキュラム

about the author
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ミュア 裕子(MUIR YUKO)
国際心理学博士(Ph.D.)
代々木インターナショナルスクール | 創業者 & 代表取締役・CEO

1999年に代々木インターナショナルスクールを設立し、27年にわたり国際教育と学校経営に従事。国際心理学博士(Ph.D.)の知見と現場での豊富な経験を活かし、教育のあり方や課題について幅広く考察・発信しています。

 

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