MYP(中等教育プログラム)とは?8教科・6つのテーマ・評価方法をわかりやすく解説

インターナショナルスクールや国際教育に関心を持つ保護者の間で、「MYP」という言葉を耳にする機会が増えています。しかし、「IBとの関係は?」「具体的に何を学ぶの?」「うちの子に合っているの?」といった疑問を持ちながら、詳しく調べる機会がない方も多いのではないでしょうか。
本記事では、MYP(中等教育プログラム)の定義や対象年齢、8つの教科、6つのグローバルな文脈、集大成となるプロジェクト、そして学校選びのポイントまで、保護者の方が知りたい情報を一つずつわかりやすく解説します。
MYP(中等教育プログラム)とは何か
MYP(Middle Years Programme)は、IB(国際バカロレア)が提供する中等教育プログラムです。思春期という大きな成長期にある子どもたちを対象に、教科の知識習得だけでなく、探究力や批判的思考力、社会とのつながりを意識した学びを重視しています。
PYPで育まれた探究型学習をさらに発展させ、将来的なDP(ディプロマ・プログラム)やCP(キャリア関連プログラム)へとつなぐ重要な位置づけを担うのがMYPです。ここでは、MYPの基本的な概要や対象年齢、IB全体の中での役割、そして誕生した背景について解説します。
MYPの定義と対象年齢
MYPとは、IB(国際バカロレア)機構が提供する4つの教育プログラムのうち、思春期から青年前期にあたる生徒を対象とした「中等教育プログラム(Middle Years Programme)」のことです。対象年齢は原則として11歳から15歳で、5年間が標準的な期間となりますが、学校によっては一部の学年(たとえば前半の2〜3年間)のみを導入している場合もあります。
MYPの対象となる年齢は、子どもの成長発達において自己が確立し自尊心が育まれる重要な時期であるとされており、MYPはまさにこの大切な時期に寄り添う教育プログラムとして提供されています。
IBの4プログラムにおけるMYPの位置づけ
IBには対象年齢に応じて4つのプログラムが用意されています。3歳から12歳を対象とした「PYP(初等教育プログラム)」、11歳から16歳を対象とした「MYP(中等教育プログラム)」、そして16歳から19歳を対象とした「DP(ディプロマ・プログラム)」と「CP(キャリア関連プログラム)」です。
| プログラム | 対象年齢 | 概要 |
| PYP (初等教育プログラム) | 3〜10歳 | 探究型の初等教育 |
| MYP (中等教育プログラム) | 11〜15歳 | 教科横断的な中等教育 |
| DP (ディプロマ・プログラム) | 16〜17歳 | 国際的な大学入学資格を目指す |
| CP (キャリア関連プログラム) | 16〜18歳 | 職業スキルを重視した実践的教育 |
MYPは、PYPで育まれた「探究する力」や「概念的に考える力」をさらに深め、現実社会とのつながりを意識した学びへと発展させる「橋渡し」の役割を担っています。そして、MYPで磨かれた学術的なスキルや自己管理力は、その後のDP・CPでの学びの土台になります。
IB全体の概要・理念については、以下の記事もあわせてご覧ください。

MYPが誕生した背景
IB機構はまず1968年、大学進学を見据えた「DP(ディプロマ・プログラム)」を創設しました。その後、1994年に中等教育プログラムであるMYPを、1997年には初等教育プログラムであるPYPを設置し、3歳から19歳までの子どもを対象とした一貫性のある国際教育プログラムを確立しています。
MYPは、急速にグローバル化する社会に参加するために必要なスキルや態度を身につけ、概念や知識への理解を深めることに重点を置いた教育として、現場の教師たちの発想や取り組みをもとに誕生しました。「DP(高等教育)での成功を見据えた準備期間」として設計されたという経緯が、現在のMYPの性格を大きく特徴づけています。
MYPの学びの仕組み:8教科・6つのグローバルな文脈・ATLスキル

MYPの特徴は、教科ごとの知識を学ぶだけでなく、その知識を現実社会の課題やグローバルな視点と結びつけながら探究する点にあります。ここでは、MYPの学びを支えている「8つの教科」「6つのグローバルな文脈」「ATL(Approaches to Learning:学習のアプローチ)スキル」という3つの重要な枠組みについて解説します。
8つの教科で「幅広くバランスのとれた学習」を実現する
MYPでは、言語と文学・言語の習得・個人と社会・理科・数学・芸術・保健体育・デザインという8つの教科を通じて、バランスのとれた学習が行われます。すべての生徒が、5年間のプログラム期間を通じてこの8教科に取り組むのです。
たとえば「個人と社会」には歴史や地理、公民といった科目が含まれ、「理科」には生物・化学・物理が統合されています。一方で、教科同士の境界はあえて曖昧にされており、教科ごとに分けて学ぶだけでなく、複数の教科をつなげながら、一つのテーマや概念について考えを深めていく学びが重視されているのもMYPの大きな特徴です。
6つの「グローバルな文脈」を通して学びを実社会と結びつける
MYPでは、各教科で学ぶ内容を現実世界の課題や身近な出来事と結びつけて考えられるように、6つの「グローバルな文脈」が用いられます。
・アイデンティティーと関係性
・空間的時間的位置づけ
・個人的表現と文化的表現
・科学技術の革新
・グローバル化と持続可能性
・公平性と発展
これらの文脈は、PYPで扱う6つの教科横断的テーマをさらに発展させたものです。生徒が「なぜこの内容を学ぶのか」「自分や社会とどのようにつながっているのか」を考えるための、大切な枠組みとなります。
たとえば理科では「科学技術の革新」という文脈を通して、気候変動や医療技術の進歩が社会にどのような影響を与えているかを探究することができます。
このようにMYPでは、教科の知識を単に覚えるだけでなく、実社会とのつながりの中で理解を深めていきます。
「ATLスキル」で「学び方そのもの」を身につける
MYPでは、学習内容の習得と並行して、ATLと呼ばれる汎用的なスキルの育成が重視されています。ATLスキルは5つのカテゴリーと、それらに含まれる10のスキルクラスターで構成されています。
| カテゴリー | スキルクラスター |
| コミュニケーションスキル | コミュニケーションスキル |
| 社会性スキル | 協働スキル |
| 自己管理スキル | 管理/調整スキル・情動スキル・振り返りスキル |
| リサーチスキル | 情報リテラシースキル・メディアリテラシースキル |
| 思考スキル | 批判的思考スキル・創造的思考スキル・転移スキル |
ATLスキルそのものは正規の評価対象ではありませんが、各教科の成績に反映される重要な要素として位置づけられているものです。
MYPの集大成:コミュニティープロジェクトとパーソナルプロジェクト

MYPでは、日々の授業で身につけた知識やスキルを実践的に活用する機会として、プロジェクト型学習が重視されています。その代表的な取り組みが、「コミュニティープロジェクト」と「パーソナルプロジェクト」です。ここでは、MYPの学びの集大成として位置づけられる2つのプロジェクトについて解説します。
コミュニティープロジェクト(第3・4年次)
MYPの第3年次または第4年次には、「コミュニティープロジェクト」に取り組む機会が設けられています。
これは「コミュニティーと奉仕活動」をテーマに、地域社会が抱える課題を理解し、サービスラーニング(奉仕活動を通じた学び)によってその課題に取り組むプロジェクトです。1人、または最大3人までのグループで行われ、計画から実施、振り返りまでの一連のプロセス全体がMYPの学びの一部として評価されます。
具体的には、地域の高齢者支援団体との連携、環境問題への啓発活動、多文化交流イベントの企画など、各学校が置かれているコミュニティーの特性に応じて、さまざまな形で実施されています。
パーソナルプロジェクト(第5年次)
MYP最終学年である第5年次には、生徒全員が「パーソナルプロジェクト」に取り組みます。
パーソナルプロジェクトは、MYPでの学びの集大成にあたる活動です。生徒は自分でテーマを設定し、リサーチや制作、レポート作成に取り組み、最後のその成果を発表します。
コミュニティープロジェクトが地域社会との関わりを重視するのに対し、パーソナルプロジェクトは生徒自身の興味・関心を出発点に、基本的に個人で進める点が特徴です。これまでに身につけてきたATLスキルを実際に活用しながら、自分の関心分野をさらに深め、広げていく機会となります。
MYP校を選ぶ際のポイントと注意点

MYPは魅力的な教育プログラムですが、すべての学校が同じ環境や進学ルートを提供しているわけではありません。そのため、お子さまに合った学校を選ぶためには、認定状況やカリキュラムの内容、卒業後の進路などを総合的に確認することが大切です。ここでは、MYP校を選ぶ際のポイントと、事前に知っておきたい注意点について解説します。
MYP認定校の現状を知る
お住まいの地域でMYPを提供している学校があるかどうかは、事前に確認しておくことをおすすめします。文部科学省のIB教育推進コンソーシアムによると、2026年3月31日時点で国内のMYP認定校は47校、候補校は11校です(一条校・非一条校の合計)。
MYP教育で気をつけたい点と家庭でできるサポート
MYPを実施している学校の中には、日本語の授業をカリキュラムに組み込んでいるところもあります。ただし、日本語の読み書き、特に漢字や語彙力は、学校の授業だけで十分に身につくとは限りません。
そのため、家庭でも読書の習慣をつけたり、日常会話の中で考えを言葉にする機会を増やしたりすることが大切です。こうした家庭でのサポートが、日本語力の土台を育てることにつながります。
また、MYP修了後にDPへ進むのか、日本の高校・大学を目指すのかによって、学校選びで重視すべきポイントは変わります。目の前の学習環境だけでなく、将来の進路も見据えながら、学校を選ぶことが大切です。
代々木インターナショナルスクールのIBプログラム

代々木インターナショナルスクールは、1999年の開校以来、東京・渋谷区を拠点に探究型の国際教育を実践してきたインターナショナルスクールです。PYPで培ってきた探究型学習の基盤をさらに発展させ、Middle schoolでもinquiry-based learningを提供することで中高一貫の学びを実現しています。代々木インターナショナルスクールでのカリキュラムの内容や入学に関する詳細については、学校見学会(School Tour)への参加や個別の入学相談をご利用ください。
まとめ
MYP(中等教育プログラム)は、11歳から15歳を対象とした5年間のIB中等教育課程です。8つの教科、6つのグローバルな文脈、そしてATLスキルという3つの柱を通じて、知識の習得と同時に「学び方そのもの」を身につけられる点が最大の特徴です。コミュニティープロジェクト・パーソナルプロジェクトという集大成の経験は、子どもが自立した学習者として大きく成長する転換点となるでしょう。
MYPを実施する学校を選ぶ際には、認定の有無、一条校か非一条校か、DP以降の進路との整合性、そして日本語教育のサポート体制などを総合的に検討することが大切です。
IB全体の仕組みや背景についてさらに理解を深めたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。




